「なぜ僕は今　ここにいるのだろう」
故郷を離れ二百五十里　遠い北の大地にありて
人知れず自分の存在を見つめた日々

厳しい冬　零下２０度の極寒の中　
僕が培ったものは何だったのだろう

雪解けを待ち侘びて　高鳴る衝動を抑えきれず
物置から愛車を引っ張り出し　町を飛び出した卯月
残雪厳しき山の景色を眺めながら走る北国の路
生きていることを実感できた瞬間だった

青葉の頃　授業を抜け出し　ひたすら最果てを目指した
梅雨なき大地は花の香りゆかしき季節
浜茄子　紫丁香　蝦夷透百合　そして薄紫香花
来訪者の心を癒す文月の風物詩

そして霧が一面大地を覆い尽くす頃
あえて僕は道東へと向かう
霧多布　美幌峠　摩周湖と霧の代名詞にて　その風情を感じとる
どこまでも真っすぐ延びた一本道を　
僕は脇目も振らずに疾走した　様々な思いを胸に秘め

ダイヤモンドダストが天から舞い降りる季節
白鳥と丹頂のコラボレーションがひと際輝いて
一面の銀世界に彩を添える
そして流氷流れ着くオホーツクの岬では　
自然の偉大さをまざまざと見せつけられる

大自然の懐に抱かれて　僕は寡黙に旅を続けた
生と死の営みが繰り返されるこの世界で
僕は確かな証をこの地に刻んだ

いろいろな人と出逢い　動物たちと触れあい　
そして雪　霧　雨　嵐と苛酷な気象条件の中で
僕は必死にスロットルを握り続けた
脳裏に浮かぶ幾多の場面　かけがえのない日々
まるで夢物語

ゆっくりと流れる時間の中で　自らの体験を通して　
いつの間にか僕は少しずつ大人になっていった
何物にも代え難いこの経験があったからこそ
今の自分がある

果てしなき大地　終わりなき夢　
その断片を拾い集め　温め直しながら　今も旅は続く

遥かな旅路・・・　
「明日　僕は風に吹かれてどこを旅しているのだろう」
いつか見た夢の続きをさがして